星界シリーズ第1作『紋章』の全13話分を1本にまとめたバージョンである。TVシリーズは主人公ジントの視線に寄りそうかたちで物語が進行し、ゆったりとした時間の中で「星々の世界」を観客がいっしょに体験するような作風だった。この「特別編」ではむしろ「星界のエッセンス」を凝縮した高密度感が大きな魅力となっている。ジントとラフィールの出逢い、涙の脱出行からフェブダーシュ男爵との対決へとテンポ良く進むストーリーテリングが心地よい。平面宇宙という本作独自の設定を活かした戦闘シーンも、密度が上がって興奮もの。全体で100カット以上の新作が追加されているが、ファン必見なのがラスト近くの“舞い”の新作シーン。実にサービス精神たっぷりの90分だ【アニメ評論家・氷川竜介】
「絆のかたち」とサブタイトルがつけられた120分の総集編。単にTVシリーズを圧縮したものではなく、より原作に近い構成をとって260カットにも及ぶ大幅な新作カットを追加。アナザーバージョンと呼ぶにふさわしい新たな魅力をたたえた作品に仕上がっている。ドラマ的には、成長したラフィールたちの上官にあたる突撃隊司令のアトスリュア百翔長が魅惑的。3年前に彼らの殺したフェブダーシュ男爵の妹だとわかる下りには、星界シリーズ独特の雰囲気が出ている。アーヴの獲物を狩るとき、猫に似た独特のハイテンションな美しさが現れる。華麗で執拗なまでにたたみかける宇宙の艦隊戦は、特別編では実に濃厚。星界シリーズの魅力満載、入門編としても見られる傑作である【アニメ評論家・氷川竜介】